サラリーマンやOLの方の中には、昼食後の仕事中についつい眠くなってしまったという経験がある方もいるのではないでしょうか?近年は、毎日夜遅くまで業務をこなしている方も多く、日中に睡魔が来てしまうケースも少なくないようです。そんな時、「昼寝制度のようなものがあったら良いのに」と感じる方もいるでしょう。実は今、昼寝制度を導入する企業も少しずつですが増えてきているのです。そこで今回は、昼寝制度とはどのようなものなのか、またメリットや課題についてご紹介していきましょう。
昼寝制度について
昼寝制度は、その名の通り従業員が就業時間中に仮眠を取るのを許可する制度です。睡魔と戦いながら仕事を続けるよりも、1度作業を中断して短時間でも睡眠を取った方が作業効率は上がると考えられています。実際に、短時間の睡眠を取ると脳の働きが回復すると言われています。眠いにも関わらず忙しさで仕事を続けていると、考えが思うようにまとまらなかったり、ミスしてしまったりするケースがあるでしょう。普段の眠りの質が悪いと、身体と脳の疲れが取れていない可能性があります。
そもそも、日本は世界でも平均睡眠時間が短いと言われています。2014年には、厚生労働省が11年ぶりに健康づくりのための調査を行いました。その結果によると、日本人の平均睡眠時間は7時間43分で、全26ヶ国の平均である8時間19分よりも短いと分かったのです。海外では、仮眠を取るためのスペースを確保している企業や、昼寝制度を導入している企業も珍しくありません。その影響を受けて、国内でも昼寝制度を導入しようとする動きが出てきています。昼寝制度は、専用の仮眠スペースを設け、仮眠中は電話の取り次ぎをしないといったルールを設けることで、従業員がリフレッシュできるよう努めるものです。「シエスタ制度」と呼ばれたりもしていて、休憩時間を長めにする取り組みが推奨されています。シエスタはスペインやラテン系の諸国で慣習的に行われている昼寝を意味し、1つの文化として根付いている大切なものです。昼食後に昼寝やリラックスできる時間を設けると、午後の生産性が上がると言われています。また、この時間に自由な時間を確保し、従業員が有効活用すれば個々のモチベーションもアップするのではないかと考えられているのです。
埼玉県さいたま市のリフォーム会社である「OKUTA」は、昼寝制度を導入している企業の1つです。OKUTAでは「パワー・ナップ制度」として実施されており、15分~30分程度の仮眠が認められています。従業員は、眠気を感じると自席や休憩室で仮眠を取っており、実際に机上で熟睡している光景を目にするのは珍しくありません。営業会議や全社員会議でも昼寝休憩が設けられており、完全自己責任制なのでタイミングも自由となっています。ただ、各自で納期を守りしっかり業務を進めるというのが大前提となっているので、メリハリを付けて業務に取り組んでいると言えるでしょう。
昼寝制度のメリットとは?
では、昼寝制度には企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?
・生産性向上
前述しているように、業務を1度中断して短時間の睡眠を取ると脳の働きが回復して生産性が高まると言われています。仮眠休憩を取ることで、リフレッシュした状態で午後の仕事を始められるのです。集中力や注意力もリセットされた状態になるので、午後の時間帯の生産性が向上するというわけです。仮眠を取らずに眠気と戦ったまま作業をしていても、生産性はアップしません。
・従業員の満足度が上がる
昼食後は、どんな人でも眠くなってしまう時間帯ではないでしょうか?眠いまま目を擦って仕事をするよりも、その時間に休憩時間を少し長めに取って仮眠すれば、従業員にとってもリフレッシュする時間が得られるでしょう。
効率良く作業を進めるために仮眠休憩を取れるという状態にしておけば、従業員もモチベーションがアップしやすいでしょう。
・働き方改革が進められる
近年は、働き方改革として就業時間や業務形態などを改める企業が増えてきています。昼寝制度の導入は、フレックスタイム制度を導入するのと同じように、生産性向上というメリットがあります。フレックスタイムと組み合わせての利用も可能にすれば、従業員はさらに自由な働き方ができるようになるでしょう。
例えば、早く帰らなければならない日には、昼寝制度は利用せずに通常の休憩と取り、退社時間を早めるというのも可能になります。最近は、自由な働き方ができる企業が求められてきています。効率的な働き方ができるフレックスタイム制度との組み合わせは、仕事とプライベートの調和を図れるとして注目を集めているのです。
このように、昼寝制度を導入して得られるメリットはたくさんあります。従業員にとっても企業にとってもメリットがあるため、導入が推奨されているのです。
昼寝制度の課題は?
昼寝制度の特徴やメリットについて解説してきましたが、逆に昼寝制度における課題はあるのでしょうか?実際に昼寝制度が導入できる企業というのは、ある程度決まってきます。
例えば、長時間パソコンに向かって作業をするIT系や事務職系などは、昼寝の活用もしやすいでしょう。しかし、全ての業態や職種において取得できるわけではありません。どのような企業においても導入しやすいような枠組みや方針があれば、さらに導入率が上がるのではないでしょうか?
また、昼寝制度を導入しても、正しく仮眠できなければ逆効果になってしまいます。昼時に仮眠を取るなら、15時までに15分ほどの昼寝をするのが理想的だと言われています。あまり長く寝てしまうと、その後の仕事に集中できなくなってしまったり、休憩後も頭がぼんやりしてしまったりする可能性があるのです。
昼寝制度を設けると、中には退社時刻が遅くなり過ぎてしまうケースもあります。仮眠時間を設けて業務時間も確保しようとすると、どうしても退社時刻が遅くなってしまうからです。退社時刻が遅くなれば、就寝時刻も遅くなるため私生活にも影響が出てしまいます。就寝時刻が遅くなるということは、翌日の仕事にも悪影響が出る可能性があるという意味でもあります。そうなると悪循環になってしまうので、導入する際には退社時刻についても慎重に考慮する必要があるでしょう。
職場で昼寝と聞くと、怠惰なイメージを抱く方がまだまだ多いのではないでしょうか?そのため、導入している企業はあってもまだ少ないのが現状です。さらに、企業としては従業員が定められた枠から逸れないようルールを強化している所が多いです。ただ、ルールを強化している企業では逆に従業員が受け身体制になりがちで、自己規制によって自立心や生産性が下がってしまう可能性があるのです。昼寝制度を導入すれば、自己規制緩和や自立心・生産性を向上させるためにも有効と言えます。しかし、導入する際には逆効果にならないよう注意も必要です。
今回は、昼寝制度の特徴やメリット、課題について詳しく解説してきました。仕事中に昼寝と聞けば、誰でも怠惰なイメージを抱いてしまうでしょう。しかし、生産性向上や働き方改革を進める上でも、昼寝制度は効果的です。
睡魔と戦いながらダラダラ作業するよりも、業務の効率を上げてミスを減らせば、企業にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか?従業員のモチベーションアップも期待できるので、今後は導入する企業も徐々に増えていくでしょう。