2023年9月、旧ジャニーズ事務所(現:株式会社SMILE-UP.)の記者会見が行われました。会見の対応について批判が集まりましたが、どのような内容だったのでしょうか。
今回は旧ジャニーズ事務所の危機管理対応や、会見について記事を書いた郷原弁護士、登壇した木目田弁護士の意見を紹介したいと思います。
ジャニーズ事務所の記者会見について
旧ジャニーズ事務所の「ジャニー喜多川氏の性加害問題」について、2023年9月7日に1回目の記者会見が開かれました。ジャニーズ事務所の社名を維持する方針を発表しましたが、批判が集中し、10月2日の2回目の記者会見で社名を「株式会社SMILE-UP.」に変更し、被害者の賠償を終えたら廃業すること、これまでの業務を引き継ぐ新会社を設立することなどを発表しました。
これまでの対応を根本から見直し再出発をアピールしましたが、会見は質問者の指名をめぐって大荒れとなり、翌日には特定の記者を指名しないようにする「NGリスト」の存在まで明らかとなったため、さらに批判を浴びる事態になりました。
会見について記事を書いた郷原弁護士は、次のように述べています。
“記者会見という危機対応の場で新たな不祥事が発生したことは、企業の危機対応への弁護士の関与の在り方が問われる事態だと言えよう。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/997178f114599a30dcd38203b77395b293d9aeb9
以上のことから、旧ジャニーズ事務所の危機管理対応について、郷原弁護士が木目田弁護士を批判していることが分かります。
記者会見の関係者
記者会見には、東山紀之社長、井ノ原快彦副社長、木目田裕弁護士が会見者として登壇しています。
【木目田弁護士のプロフィール】
1991 東京大学法学部第一類 (LL.B.)
1993 - 2002 検事
1997 - 1998 東京地方検察庁特別捜査部
1998 - 1999 Notre Dame Law School (米国) 客員研究員
1999 - 2001 法務省刑事局付(総務課・刑事課担当)
2001 - 2002 金融庁総務企画局企画課 課長補佐
2002 - 西村あさひ法律事務所入所
木目田弁護士は危機管理実務の創始者であり、報道などで注目を集めた主要な企業不祥事の多くで対応をアドバイスしています。事務所のホームページでは危機管理やコンプライアンスに関するニューズレターも出しています。
木目田弁護士のニューズレターとは
木目田弁護士は自身が所属する法律事務所のホームページ内で、危機管理に関するニューズレターを発信しています。
2024年3月のニューズレターでは、誹謗中傷について次のように書かれています。
誹謗中傷や個人攻撃に対する対策は、本当に難しいと思います。私は弁護士として誹謗中傷への対応を企業や個人にアドバイスしてきました。また、私自身も特定の人物から執拗な誹謗中傷や個人攻撃を受けています。
―中略―
例えば、誹謗中傷者に抗議してもかえって逆上や仕返しを招くだけだから、ある程度の誹謗中傷であれば、泣き寝入りになるかもしれませんが、黙殺して、誹謗中傷者の関心が別の出来事に移るのを待つ方がよいかどうか、それとも、誹謗中傷者による逆上や仕返しが相当程度あるだろうことを覚悟しつつ、抗議や法的手段を行っていくべきかどうかなど、被害者は非常に悩ましい立場に立たされます。
真意は定かではありませんが、木目田弁護士への個人攻撃についても触れられている点から、これらの主張は郷原弁護士の批判に対するものなのではないでしょうか。
旧ジャニーズ事務所という著名な芸能事務所であるため注目が集まりましたが、木目田弁護士が危機管理対応に関して多くの実績を残していることにも注目すべきでしょう。
木目田弁護士や郷原弁護士の活動内容
郷原弁護士と木目田弁護士は現在どのような活動を行っているのでしょうか。
郷原弁護士の活動内容
東京大学を卒業後、1983年から検事を務めたのち、法務省法務総合研究所総括研究官兼教官、桐蔭横浜大学法科大学院教授、コンプライアンス研究センター長、名城大学教授、総務省顧問、関西大学特任教授、関西大学客員教授などを経て、現在は弁護士業を続けながら国土交通省公正入札調査会議委員なども務めています。
これまでの公職等の経験は下記のとおりです。
公職その他
防衛省公正入札調査会議委員(2006年7月~2016年7月)
経済産業省産業構造審議会商務流通情報分科会安全小委員会委員(2008年5月~2018年6月)
横浜市コンプライアンス外部委員(2007年4月~2017年8月)
横浜市コンプライアンス顧問(2017年9月~2021年7月)
株式会社IHI社外監査役(2008年6月~2016年6月)
総務省顧問・コンプライアンス室長(2009年12月~2012年12月)
総務省年金業務監視委員会委員長(2010年4月~2014年3月)
法務省検察の在り方検討会議委員(2010年11月~2011年3月)
経済産業省 令和2年度 産業保安等技術基準策定研究開発等事業電気用品等製品のIoT化等による安全確保の在り方に関する動向調査検討委員会委員(2019年4月~2021年3月)
引用元:https://www.gohara-compliance.com/about/goha
他、著書も多数出版しています。
木目田弁護士の活動内容
危機管理の観点からは、決算訂正問題やインサイダー取引等といった金商法違反、カルテルや優越的地位濫用等といった独禁法違反、営業秘密・企業機密・個人情報の漏洩やサイバーセキュリティ、海外公務員贈賄や政治資金規正法、食品・製品の安全・表示(景表法を含む)・事故、マネーロンダリング、業法違反、環境・労働安全衛生法令違反等の企業不祥事に関し、事実調査・第三者委員会、当局の捜査・調査への対応、適時開示・プレス対応、再発防止策構築やコンプライアンス徹底、株主総会対応を含むガバナンス改革、関連する民事訴訟の対応等を行っています。
他に第三者委員会や調査委員会の委員等を務めた経験や、下記のとおり多数の受賞歴もあります。
受賞歴
2023年危機管理・不正対応分野 第1位、2021年危機管理分野 第1位、2020年危機管理分野 第1位、2018年危機管理分野 第2位、2014年危機管理部門 第2位、2011年危機管理部門 第3位。2022年企業法務分野 第9位、2016年企業法務分野 第10位、2015年企業法務分野 第8位、2013年企業法務部門 第2位、2012年企業法務部門 第4位。
引用元:https://www.nishimura.com/ja/people/hiroshi-kimeda
まとめ
今回は旧ジャニーズ事務所の危機管理対応について、郷原弁護士と木目田弁護士の意見をご紹介しました。
郷原弁護士は危機管理対応について“記者会見という危機対応の場で新たな不祥事が発生したことは、企業の危機対応への弁護士の関与の在り方が問われる事態だと言えよう。”と批判しています。
木目田弁護士は自身が所属する弁護士事務所のニューズレター内で、誹謗中傷や個人攻撃に対する意見を述べています。
旧ジャニーズ事務所の問題であることも一因となり注目や批判が集まりましたが、木目田弁護士は危機管理実務の創始者であり、多くのニューズレターを発信しています。
多くの人の意見を聞き、多角的な視点を持つことが重要ではないでしょうか。
それぞれの今後の活動内容についても注目していきたいと思います。