「Go To Travel」ホテル側の本音と矛盾点
※本サイトを運営する目的はアフィリエイト、アドセンス、その他広告、取材費等としており、本記事は管理人が取材費をいただき記事を執筆しています。
 

新型コロナウイルス感染症拡大に伴う緊急経済対策として打ち出されたのが「Go Toキャンペーン」です。
Go Toキャンペーンは以下の4つからなり、地域経済の活性化を目的とした官民一体型の取り組みです。

・Go To Travel
・Go To Eat
・Go To Event
・Go To 商店街

今回は4つの中から「Go To Travel」にスポットを当てて、その概要や問題点などをみていきましょう。

はてな

そもそも「Go To Travel」とは?

代金の最大半額を国が負担することで安く旅行に行けるキャンペーンです。
割引分は代金から直接引かれる場合や、クーポンが配布されるなど、状況に応じて対応が異なります。

また、対象の旅行業者などを経由した予約や、対象の施設を利用しないとキャンペーンの対象とならない場合があるので注意が必要です。

・どんな旅行が対象になる?

宿泊旅行は以下の方法で手配した旅行が対象となります。
最大半額、1人当たり1泊につき最大2万円まで割引となるかクーポンなどが配布されます。

◎対象の旅行業者で予約した宿泊と交通費がセットになったパッケージツアー
◎対象の旅行業者で予約した宿泊のみ
◎自分で対象施設に予約した宿泊

宿泊旅行の場合は、予約内容に交通費が含まれているかが大きなポイントになります。
交通費がセットになったパッケージツアーであれば割引対象ですが、自分で予約が必要な場合は対象となりません。
また、旅行業者を介さずに自分で宿泊予約をしても割引の対象にはなりますが、キャンペーン利用の申請をすべて自分で行わなければならないので注意が必要です。

日帰り旅行も最大半額となりますが1人当たり1万円の上限があります。
さらに、対象の旅行業者で温泉などの施設利用と往復の交通費がセットになったプランを予約した場合のみ対象となります。

旅行業者を介して新幹線や飛行機などの往復の交通費のみを予約した場合や、業者を介さず自分で予約したプランなどは対象とならないので注意が必要です。

・どのくらいお得なの?

宿泊旅行の場合は最大半額、1人当たり2万円まで割引となる「Go To Travel」ですが、ただ単に国が補填してくれるだけではないところがこのキャンペーンのポイントです。

地域振興も目的としているため、一部をクーポンで還元しているのです。
具体的にみてみると以下のようになります。

例:1人1泊20,000円の場合
◎旅行代金の支払いは35%引きの13,000円
◎本来の宿泊費20,000円の15%分にあたる3,000円の地域共通クーポン券を配布
◎実質10,000円で宿泊が可能になる

地域共通クーポン券は、宿泊地および隣接する都道府県で利用可能ですが、登録を受けた店舗のみが対象のため、事前に確認しておくことをおすすめします。

・キャンペーンはいつまで?

政府の発表では今のところ2021年1月31日宿泊または出発までの旅行を対象としていますが、今後の状況を見ながら変動する可能性もあるとしています。

何が問題なの?

当初は8月上旬からの予定だったところ、4連休スタートとなる7月22日より前倒しする形となって運用が開始された「Go To Travel」はスタート直後から様々な問題が噴出していました。

・開始時期を前倒し

開始当初、東京での新型コロナウイルス感染者数が増加傾向にあったため、東京目的の旅行や東京都民の旅行は対象外となり、東京近郊の観光地では落胆の声が上がったのです。
また、開始時期の前倒しはお客様を迎えるホテル側にも混乱を招きました。

急遽決まった前倒しは割引準備が間に合わないホテルも少なくなく、お客様から一度宿泊料金を全額支払ってもらってから還付で対応するなどの措置を取らざるを得ませんでした。
割引と還付、さらにクーポンと、渡す方も受け取る方も手続きが複雑化してしまいキャンペーンの魅力がわかりづらくなってしまいました。

とはいえ、サービスを提供するホテル側としてはキャンペーンの詳細について利用者からの問い合わせに正しく答える必要があります。
ところが、「Go To Travel」に関する説明会は非公開で行われ、多くのホテルはきちんとした説明を受けられませんでした。

説明がなければ当然準備もできず、運用開始に間に合わせられるわけがありません。
運用開始後も「Go To Travel」事務局からは適切なアナウンスはなく、ホテル側から問い合わせても回答を得るまでに何日もかかる状態でした。

また、キャンペーンの予算には上限があり、予約サイトや旅行業者ごとに割り振られていますが、事務局との連携が取れていないため、どのタイミングで上限に達してしまうかわからず、安易にお客様に案内することもできません。
利用者からの問い合わせで多いのが「キャンペーンの対象プランなのかどうか」です。

ホテルのサイト上には表記がなく直接問い合わせるしかないためですが、上述のような状況から、ホテル側も自社のサービスがキャンペーンの対象なのかわからないため、表記できなかったのです。

・事務局と政府の連携不足が原因?

「Go To Travel」事務局はJTBや日本旅行などの大手旅行会社と、協力団体として楽天やリクルートライフスタイル、ヤフーなどで構成されています。
旅行業者への予算の割り当てや実績管理なども行い、国から巨額の委託費が支払われていました。
しかし、キャンペーンの運用開始直後からトラブルは生じます。

利用者からの予約が殺到した大手旅行サイトではあっという間に予算が底をつき、独自にキャンペーン内容を縮小しました。
国を挙げてのキャンペーンを自社のみ終了させることはできないため、やむを得ない措置といえるでしょう。
これに驚いたのが利用者です。

旅行代金の35%は割り引かれ、15%はクーポンで還元されると謳っていたにも関わらず、割引率を縮小し、回数制限が設けられていたのです。

・緊急経済政策なのに中小企業は置いてきぼり

予約が殺到した大手旅行サイトには政府が予算を投入し、キャンペーン内容も元通りとなりました。
しかし、こういった現象はすべての旅行サイトで起きたわけではありません。
中小代理店では割り当てられた予算が余っているところも多く、消化にはまだまだ時間がかかりそうです。

大手旅行サイトに予算を配分し続けることは、そういった中小代理店の売上のチャンスを奪い続けることにつながります。
緊急経済政策と銘打っておきながら大手企業にばかり手厚く支援していると批判されても致し方ありません。

「Go To Travel」が抱える課題とは?

今回、キャンペーンでは割引額を35%という割合で運用しました。
これにより観光地でも効果に差が出てきているのです。
1人10,000円引きなどといった定額割引であれば低価格帯のホテルや観光施設も恩恵を受けやすいですが、割合での運用だったため、どうしても高価格帯のホテルや観光施設に利用者が流れてしまいます。

また、新型コロナウイルス感染症への懸念から自家用車での移動が目立ち、新幹線などの公共交通機関の利用が思ったほど伸びず、結果として効果の波及は予想よりも限定的となってしまいました。
これらの課題について早急な見直しや対策が必要です。


今回は政府が打ち出した緊急経済政策の一つ「Go To Travel」についてその概要や問題点をご紹介しました。
新型コロナウイルスによる日本経済への打撃は大きく、官民一体となった政策が必要です。
「Go To Travel」自体は観光業に対する経済政策として有効です。

しかし、多くの企業や人が偏りなく利益を享受できる仕組みにしなければ不公平感が生まれ、せっかくの政策も失敗と評されてしまいます。
そうならないためにも早めに課題を整理し、見直す必要があるでしょう。