【熱海の土砂災害】土地所有者の麦島善光とは?行政は盛り土の新条例を制定!

2021年7月、静岡県熱海市の伊豆山地区で大きな土砂災害が発生しました。
多くの住宅が土石流に飲み込まれ、多数の避難者や死亡者行方不明者を出すほどの甚大な被害をもたらしています。
土石流の発生源は不当に盛られていた盛り土とみられ、静岡県は盛り土に関する新条例を作る方針を固めています。
災害が発生した盛り土箇所の土地を保有していたのは、実業家の麦島善光氏でした。
自然災害とは言え、法律上では麦島善光氏が責任を負わなければならない可能性があり、現在裁判が行われています。
そもそも土地の現所有者である麦島氏とはどのような人物なのでしょうか?
この記事では熱海の土砂災害の詳細から麦島善光氏の人物像、盛り土に関する新条例、行政の対応などについて解説していきます。

熱海で起きた土砂災害の詳細

まずは熱海で発生した土砂災害について解説します。

災害の被害規模について

2021年7月3日の午前10時半頃、静岡県熱海市伊豆山地区の逢初川にて大規模な土石流が発生しました。
土石流は多くの住宅を巻き込みながら、およそ1kmにもわたって流下したとみられます。
また、小さなものも含めて、土石流は10回以上も発生していました。
この土石流によって131棟の住宅が被害を受け、行方不明者や死亡者も確認されています。

土石流発生と被害の拡大につながったのは?

県の調査によれば、山の谷間にできた盛り土の大部分が崩落したことが土石流の発生と被害の拡大につながったとみられています。
県の調査により市に申請されていた内容とは異なる量で土が盛られていたことが判明しました。
申請当時は条例に基づいて高さ15m、約3.6万㎡で盛る計画でしたが、実際は2倍以上の量が盛られていたのです。
申請とは異なる量の盛り土は安全基準を満たしていなかった可能性があります。

災害対策に対する指摘

計画書に記述されていた雨水排水用の排水設備や、土砂の流出を防ぐ砂防ダムの設置といった対策が実際に行われていた記録がなく、排水設備が備わっていなかった可能性も指摘されています。
当時、現地は大雨に見舞われていました。
現場に近い網代では、災害発生前後の48時間で7月の観測史上では最多となる321mmの降水量が確認されています。
排水設備がなかったために、長い年数をかけて雨水が盛り土に溜まり、土砂が滑りやすい状態であったと考えられます。
そして、記録的な豪雨が土砂崩れを起こすきっかけになってしまったのでしょう。

土地の所有者である麦島善光氏について

災害が発生した土地は麦島善光氏が所有していました。
所有者である麦島氏はどのような人物なのか、経歴や実業家としての実績をご紹介します。
また、熱海の土砂災害との関係性についても見ていきましょう。

実業家の麦島善光氏の経歴・実績

麦島善光氏は1958年(当時22歳)で建設会社を創立し、経営者となりました。
10年後の1968年には長野に営業所を設け、さらに1970年にはサービスセンターも設立しています。
その2年後の1978年には、サービスセンターを管理業務や分譲業務を手掛ける総合不動産会社として新設します。
その後は東京や大阪にも営業所を設立し、営業エリアを拡大していきました。
2004年にはM&Aの実施で増やしたグループ会社を統括するためにホールディングスカンパニーを設立しています。
そのホールディングスカンパニーは、今では9つのグループが傘下に入っています。
麦島氏はホールディングスカンパニーや創業した建設会社などの代表取締役会長兼社長でしたが、2015年に退任されました。
そして、現在は学校法人の理事長を務めており、教育分野で活躍しています。

土砂災害との関係性は?

法律上、所有する土地で発生した問題や事故は所有者に責任が伴います。
そのため、被災者や遺族は現所有者である麦島善光氏に対して、損害賠償を請求する裁判を起こしています。
ただし、問題の盛り土に関して麦島氏は関与していない可能性があります。
元々、土地の所有者は別の不動産会社でした。
不動産会社は別荘の開発を目的に土地を取得しており、建設残土の処分を目的に盛り土を実施しました。
しかし、資金繰りが悪化したことで、開発後の土地は一時熱海市によって差し押さえられています。
その直後に麦島氏が購入したことで所有権が移っているので、盛り土自体は取得前に完了していたことがわかります。
また、麦島氏が不正な工事に関わった証拠も確認されていません。
売買対象の不動産に問題があった場合は、契約不適合責任の観点から売主は買主に対して契約解除の申し立てや損害賠償の請求などが可能です。
契約不適合の事実が認められるかどうかは、今後の裁判で明らかになるでしょう。

熱海の土砂災害を受けて盛り土に関する新条例を制定

静岡県は熱海の大規模な土砂災害を受け、被害拡大の要因とみられる盛り土の規制強化に向けて新条例を制定する方針を発表しています。
どのような条例になるのか、条例案をご紹介しましょう。

新条例案の主な内容

2021年10月8日時点の新条例案の主な内容は以下のとおりです。

・土地所有者に定期的な施工状況の確認や許可内容と異なる場合の報告などの義務を定める
・一定規模以上の盛り土を許可制にする
・盛り土や土壌汚染に関する技術基準を設ける
・条例違反の際は、地方自治法が認める「懲役2年以下または100万円以下の罰金」を適用する
・市町への権限移譲を行わない(市町条例があれば適用は除外)

新条例では、違反すると「懲役2年以下または100万円以下の罰金」という厳しい罰則を設けています。
また、現行の県土採取等規制条例には、土地所有者の義務が明示されていません。
そこで、新条例では土地の所有者に対して、業者が不正な盛り土を造成させないように監視の役割を課すための義務を定める見込みです。
業者が不適切な工法で盛り土を行い、工事の中止や撤去命令に応じない場合は土地所有者にも命令が出されるようになります。
それに従わない場合は、業者も土地所有者も罰則が与えられます。

規制対象となる盛り土量は1,000立方メートル以上

新条例案が出た当初の規制対象となる盛り土量は、2,000立方メートル以上でした。
しかし、2022年2月7日時点で半分の1,000立方メートル以上とより規制を厳しいものに変更されています。
富士山麓を中心とする県東部の8市町長は県知事に、規制対象を各市町と同じ水準の「500平方メートル以上または盛り土量500立方メートル以上」にできないか要望を送っていました。
依然開きはあるものの、県は要望に近付ける形で規制を厳しくしたようです。
また、規制する面積が下限の場合は盛り土の高さ下限が1mになるという配慮も盛り込む見込みです。

熱海の土砂災害をめぐる行政の対応は適切だったのか?

静岡県は新条例により盛り土の規制を強化していく見込みなので、今後不適切な盛り土が行われるリスクは大幅に減ると考えられます。
しかし、そもそも熱海の土砂災害をめぐる行政の対応は適切であったのか、疑問の声も上がっています。
県と市は10年以上も前から、現地の盛り土や災害の危険性を認識していたとされています。
盛り土を行った業者に対して、行政指導を繰り返し行っていたそうです。
それでも指導内容は改善されず、行政指導では限界があることから命令の発令が検討されます。
ところが、「所有者側が防災工事を実施した」という理由でその検討は見送られてしまいます。
しかし、排水設備工事は未完成のまま中止されているので、盛り土の安全性は確保されていませんでした。
また、当時土地を所有していた不動産会社が手続きで思い通りにならないと、市職員を恫喝したり、都合が悪いと連絡が途絶えたりすることもあり、それで十分な指導ができなかったようです。
所有者側の行動にも問題はありますが、それに対して強気な姿勢で対応できず、防災対策が放置されていた点は行政の落ち度と言えるでしょう。
新条例によって盛り土の規制が強化されるとはいえ大規模な災害が起きた後と考えると、この事案に関する行政の動きは後手になっていた可能性があります。

まとめ

今回は熱海の土砂災害や現土地所有者の麦島善光氏のこと、盛り土に関する新条例、行政の対応について詳しくご紹介しました。
多くの人の暮らしや命を奪ってしまった大災害は、人災の可能性が指摘されています。
現所有者だけではなく前所有者や行政も絡んでおり、責任の所在が複雑になっている現状です。
麦島善光氏が現所有者であることから責任が問われていますが、不適切な盛り土を行った証拠がないため、契約不適合の事実が認められる可能性もあるでしょう。
また、事前に危険性を認知していたという行政の指導不足も指摘されているので、何かしら責任を求められる可能性もあります。
最終的に誰に責任が問うことになるのかは、今後の裁判ではっきりするはずなので注目していきましょう。